Photoshopのラスタライズとは?意味と使い方を解説

Photoshopのラスタライズはどんな意味?

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Photoshopで見かける「ラスタライズ」とは何なのでしょうか。この記事では図をたくさん使って、分かりづらいラスタライズの意味と活用方法を解説します。

1. ラスタライズを理解するための予備知識

ラスタライズをきちんと理解するには「ビットマップ画像」と「ベクトル画像」という2つの画像形式について知っておく必要があります。なぜならラスタライズ=「ベクトル画像からビットマップ画像に変換すること」だからです。

ベクトルとビットマップについては↑こちらの記事でイチから図解していますが、この記事でも簡単にまとめておきます。

1-1.2つの画像形式の意味と違い

  • ピクセル画像:点の集まりで作られている
  • ベクトル画像:点とを数値化し、それをコンピュータが再現して表示

ビットマップは無数の点だけが集まって作られています。一方でベクトル画像は点と線が数値化され、その情報をコンピュータが再現してくれる画像です。

1-2.写真はビットマップ画像向き

写真はビットマップ画像

基本的に写真はビットマップ画像で再現されます。無数の色の点がびっしりと集まって1枚の写真となっているのです。

写真はベクトル画像としては再現できない

ベクトル画像では写真の再現はとても困難です。なぜなら「ベクトルはコンピュータが点と点をで逐一つなぎ合わせて再現してくれる画像」であり、無数な点の集まりを再現するには非常に大きな処理が必要になってしまうからです。

1-3.ベクトル画像は拡大してもぼけない

ロゴはベクトル画像で再現するぼけない

ロゴのような線と塗りで単純に構成されるようなものならコンピュータで簡単に数値化できます。これはベクトル画像の得意分野です。

ベクトル画像なら拡大してもぼけない

ロゴをベクトル画像にすれば、どれだけ拡大表示してもぼけません。

ビットマップにすると拡大するとぼやけてしまう

ビットマップ画像でもこのロゴ画像を再現できますが、拡大するとぼやけてしまいます。

なぜベクトル画像はぼけないのでしょうか。たとえば線を引くときを考えてみます。

ビットマップとベクトルの違い

ビットマップは点の集まりです。拡大すると点の細かさに限界がきて、ぼこぼこが目立ってしまいます。 一方で、ベクトルであれば線をコンピュータが再現しているので、拡大してもコンピューターが線を画面に合わせてきれいに表現し直してくれます。

このような理由からベクトル画像はぼやけないのです。

1-4.ベクトル画像は縮小・拡大を繰り返してもぼけない

Photoshopではこれが非常に重要なポイントになります。

ビットマップ画像は縮小・拡大すると画質が落ちる

ビットマップ画像のサイズを一度でも縮小すると、画質が落ちてしまいもう戻りません。

縮小・拡大を繰り返しても画質が落ちない

ベクトル画像ならサイズの縮小と拡大を繰り返しても画質は落ちません。

つまり画質が落ちる心配なく、どれだけ拡大してもきれいに表示されるのがベクトル画像なのです。

2. Photoshopの作業では…

サルワカくんの顔(通常)
サルワカくん

「ラスタライズ」の意味をきちんと理解するために、もう少しだけじ前段を読んでくださいませ。

ビットマップ画像とベクトル画像を理解すると、フォトショップの仕組みがだんぜん理解しやすくなります。

2-1.フォトショップではベクトルのレイヤーとビットマップのレイヤーが混在している

レイヤーの知識

ここからは少しレイヤーの基本的な知識が必要になります。「レイヤーなんて全く分からない」という方は、以下の記事をざっと読んでみてください。

下の画像はフォトショップのレイヤーパネルです。レイヤーには種類がたくさんありますが、ここではよく使うレイヤーを並べてみました。

フォトショップの主要なレイヤー一覧
フォトショップの主要なレイヤー

実はこの中には、ビットマップ画像的なレイヤーベクトル画像的のレイヤーが混在しています。

ビットマップとベクトルのレイヤー
ビットマップとベクトルに分けると…

それぞれのレイヤーが「ビットマップなのか、ベクトルなのか」をいきなり全て覚える必要はありませんが、両タイプのレイヤーが入り混じっているということを理解しておく必要があります。

2-2.ペイント編集ができるのはビットマップのレイヤーだけ!

フォトショップ初心者なら誰しもがつまずくところが「ブラシツールで線を描いたり、消しゴムツールで消したり、塗りつぶしツールでで塗りつぶしたりすることができるのはビットマップのレイヤーだけ」という点です。

ペイントできるのはビットマップレイヤーだけ
ペイント作業ができるのはビットマップのレイヤーだけ

ベクトルのレイヤーでブラシや消しゴムを使おうとすると…

文字レイヤーはベクトル的レイヤー

たとえば、文字レイヤーはベクトルのレイヤーです。どれだけ拡大してもぼやけませんし、文字作成後でも色を簡単に変えることができます。一方で、直接ブラシで塗ったり消しゴムで消すようなペイント作業をすることができません。

続行する前にこのテキストレイヤーをラスタライズする必要があります。

もし文字レイヤーを選んだ状態で、消しゴムを使おうとすると「続行する前にこのテキストレイヤーをラスタライズする必要があります…」というような警告が出てしまいます。

3. ラスタライズとは?

サルワカくんの顔(通常)
サルワカくん

長くなってしまいましたが、ここまでの話を基に、ラスタライズの意味について解説します。

ラスタライズとは、簡単にいうとベクトル画像をビットマップ画像へと変換することです。フォトショップではラスタライズされたレイヤーは、通常のレイヤー(ブラシや消しゴムが使えるレイヤー)へ変換されます。※ビットマップ画像は「ラスター画像」と呼ばれたりもします。つまり“ラスター画像へ変換する”のでラスタライズと呼ばれるわけですね。

ラスタライズとは
ラスタライズのイメージ

3-1.ラスタライズのメリットは?

①ブラシや消しゴムが使えるようになる

画像レイヤーになるので、自由にペイント作業が行えるようになります。

②作業ファイルの容量が軽くなる

「ベクトル画像」から「ビットマップ画像」に変換すると基本的に作業ファイルは軽くなります。

3-2.ラスタライズのデメリットは?

①拡大するとぼけてしまう

ビットマップ画像になるので、拡大すると画像(図形や文字)がぼやけてしまいます。

②一度でも縮小すれば画像が荒くなってしまう

作業中に画像や図形を縮小してしまうと、後から拡大しても画質は落ちたままになってしまいます。

③色や文字の変更が難しくなる

文字レイヤーをラスタライズしてしまえば、もう文字列は変えられなくなります。つまり、ただの文字が書かれた画像になってしまうわけですね。図形(シェイプレイヤー)もラスタライズしてしまうと、色も後から簡単に変更できなくなります。簡単にいうと塗り直さなきゃいけなくなります。シェイプについては後から詳しく説明します。

3-3.「ラスタライズしますか?」への対処法

続行する前にこのテキストレイヤーをラスタライズする必要があります。

話は戻って「レイヤーをラスタライズしますか?」という警告が出たら、次の対処をしましょう。

対処法①[はい]をクリック

これでビットマップの画像レイヤーに変換されるので、自由にペイント作業ができるようになります。

文字レイヤーをラスタライズ

文字レイヤーをラスタライズすると…

画像レイヤーに

通常のレイヤー(画像レイヤー)に変換されます。

画像レイヤーにするとブラシも消しゴムも使えるように

これでブラシや消しゴムなどを直接使えるようになります。

ただし、文字列を変えることはもうできなくなります。

対処法② レイヤーを新しく作る(おすすめ)

「ラスタライズしますか?」の警告をキャンセルして、新しくレイヤーを作り、その上からペイント編集をしましょう。

レイヤーを新規追加

レイヤーはレイヤーパネルから新規追加できます。

追加したレイヤーの上からブラシを使う

追加したレイヤーを選択したうえでブラシなどのペイント作業をすれば、文字レイヤーを保つことができるわけですね(ただし消しゴムで文字を直接消すことはできないので、消したい部分を白ブラシで塗るなどして代用しましょう)。

サルワカくんの顔(通常)
サルワカくん
この対処法は、文字レイヤーだけでなく他のベクトルのレイヤーでも同じです。

4.主なレイヤーのペイント編集可否

最後に参考がてら、以下に主なレイヤーの「ブラシなどのペイント編集」の可否をまとめておきます。

主なレイヤーまとめ

  • 主なレイヤー
    フォトショップの主要なレイヤー一覧
  • 通常のレイヤー(画像レイヤー):ブラシや消しゴムが使えるレイヤーを新規追加したり、画像を取り込むと作られるレイヤー。ブラシは基本的にこの通常のレイヤー上で使う。
  • 文字レイヤー:ブラシや消しゴムは使えないベクトルのレイヤーであるため、拡大しても文字はぼけない。また、文字入力後も簡単に文字列や文字色を変えることができる。
  • スマートレイヤー(スマートオブジェクト):ブラシや消しゴムは使えないベクトルのレイヤーとビットマップの中間のような画像形式。ビットマップの画像をスマートオブジェクトに変換すると、画質がそれ以上落ちなくなる。詳細は「スマートオブジェクトの使い方」で解説。
  • シェイプレイヤー:ブラシや消しゴムは使えない楕円形ツールや長方形ツールを使うと自動的に作成されるレイヤー。ベクトルのレイヤーであるため、拡大してもぼけない。また色を後から簡単に変えることができる。
  • 塗りつぶしレイヤー:ブラシや消しゴムは使えないキャンバス全体を塗りつぶすために作成するレイヤー。使い方はこちらで解説。ベクトルのレイヤーであるため、直接ブラシや消しゴムを使うことはできない。
  • 背景レイヤー:ブラシや消しゴムが使えるキャンバスを作ったときに用意されているレイヤー。

Photoshopでペイント編集できるレイヤーとできないレイヤーを知っておくと何かと作業が楽になります。いきなり頭に叩き込むのは大変ですが「ペイント編集できるできないレイヤーがあること」と「ラスタライズのメリットとデメリット」だけは頭に入れておきましょう。

サルワカ