卵を温めたらひよこは孵る?有精卵と無精卵の違いなどを解説

スーパーのたまごを温めると?

スーパーにずらりと並ぶたまご。誰しも子どもの頃にでも一度は、「温めたらひよこが孵(かえ)るんだろうか・・・」と思ったことがあるのではないでしょうか。この記事ではそんな、「一度は疑問に思ったことがあるけど調べるほどではなくて未解決のままな疑問」にお答えします。

1.スーパーのたまごは温めると孵るの?

有精卵と無精卵

まず、スーパーで売っている卵が孵るかどうかについてお答えします。結論から言うと、「基本的には孵らない」が正解です。どれだけ必死にあたためても、大事に扱ってもひよこが孵ることはありません。これは、保管状態がどうたらこうたらの前に、そもそもその卵が「ひよこが孵る仕様ではない」のが原因です。冷やされたからとか、洗浄されたからとかそういう話ではないのです。

この「ひよこが孵る仕様ではない卵」を無精卵といいます。対して、ひよこが孵る卵は有精卵といいます。スーパーに普通に並んでいる卵は、すべて無精卵です

2.有精卵、無精卵の違いは?

2-1.有精卵とは何か

有精卵とは、鶏が交尾して生まれる卵です。メス鶏の卵(らん)が受精卵になり、それがたまごとして生まれた場合は、温めるとひよこが孵ります。ひよこの元である「胚盤」がはっきりと形成されており、この胚盤がひよこになるのです。え、黄身がひよこになるんじゃないの?と思った方は、一度こちらをご覧ください。

有精卵の生産方法

オスの鶏とメスの鶏をいっしょに飼う必要があり、かつ放し飼いか平飼い(ケージの外で、複数羽を柵の中で飼うこと)で飼育しなければなりません。有精卵の生産にはコストもかかります。しかも、いっしょに過ごしている鶏たちが必ずしも交尾するわけでもないので、100%有精卵がうまれるわけではありません。有精卵の生産は、なかなかに難しいと言えます。

2-2.無精卵とは何か

無精卵とは、交尾をしていない鶏が、日課的に産むたまごのことです。ケージの中で1羽ごとに飼われているため、交尾は起こりえません。無精卵は受精卵になっていないため、胚盤がひよこになることはありません(そもそもきちんと形成されない)。スーパーに普通に並んでいるのはこのたまごです。

2-3.有精卵と無精卵の栄養の違い

有精卵と無精卵の栄養価は同じ

有精卵はひよこになるんだから、そっちの方が栄養が高いんじゃないの?というのがよくある勘違いです。結論をいえば、有精卵と無精卵では栄養価的にはなにも変わらないです。卵黄・卵白の量や、含まれるビタミン量など、なにも変わりません。

そもそもたまごが産まれるときには、ひよこになろうがなるまいが、たまごの中身はフル装備で産まれます。毎度毎度、鶏はお腹のなかで常に全力でたまごを作っているわけです。有精卵・無精卵の構成成分的な違いは、「胚盤(ひよこの元)の有無」です。この胚盤は、点ほどの小ささであり、それがたまごの構成成分に大きく影響することはありません。有精卵か無精卵かよりも、よい飼料を食べているかの方がよほどたまごの成分に影響します

なお、たまごには栄養や味の違いは現れませんが、もしなにか違いがあるとしたら、おそらく親の鶏のお肉かと思われます。有精卵を産む鶏は放し飼いなので、無精卵を産むケージ飼いの鶏とちがって運動量が多くなります。運動量が適度に多いと肉質はよくなります。名古屋コーチンなどの地鶏は、たっぷり運動させてもらっていますのでおいしくなるわけです。よって、有精卵と無精卵でたまごに品質的な差はありませんが、強いていうなら親鶏の肉に差はあるかもね、という結論になります。

3.ひよこにならないのに、なんで鶏は毎日たまごを産むのか?

そもそもたまごを産むという行為は、子孫を残すために行うものです。しかし鶏は、交尾していなくても義務的に日々たまごを産むことができます。これはなぜでしょうか。

人間と比較してみましょう。人間は排卵がおよそ一ヶ月に1回です。このときに受精が起こらなければ、卵(らん)はそのままさよならします。対して、鶏は排卵が1日に1回で、しかも受精があってもなくても卵(らん)をもとにたまごが形成され、それが産み落とされるのです。つまり、鶏は排卵=産卵なのです。子孫になるならないは別として、とりあえず排卵されたらそれがたまごになり、体外に出てくるというわけです。人間の「排卵→受精(必須)→出産」とは流れが異なるのです。

ではなぜ、鶏はそんなに頻繁に排卵するのでしょうか。これは、人間が行った品種改良によります。昔、まだ鶏が野生だった頃(今でも海外の一部地域には鶏の祖先的な野鳥がいます)、年に数回排卵し、交尾して受精卵となり、産んだたまごを温めてひよこを孵していました。これが生物としての「普通」です。しかし人間が「家畜」として飼育しはじめると、年に数回しかたまごがとれないなんて困る!ということで、品種改良を重ね、排卵周期の短い(1日1回排卵する)鶏になっていったわけです。こうして、鶏は1日1回、たまごを産むようになりました。

鶏は1日2個以上のたまごは産まないのか?

たまごは1日1個

結論をいえば、産みません。排卵=産卵の鶏ですので、排卵の数だけ産卵があります。排卵、つまり卵(らん)が形成されて排出されるには約24時間必要であり、そのため排卵は1日1回しか起こりません。なので、排卵が1日一回、すなわち産卵も1日1回です。(23時間で次のたまごが産まれて1日2個になることもありますが、わたしたちの生活の時間の感覚でいえば1日1個です。12時間とかで次のたまごが産まれることはありません)

4.有精卵はなんのために作られているのか

コストも手間もかかるのに、無精卵と栄養や味的には変わらない有精卵。なぜ、スーパーにはほとんど並ばない(並ぶときには”有精卵”と明記されます)のに生産されているのでしょうか。

実は、インフルエンザワクチンの生産のためのウイルス培養に、有精卵が使われているのです。ウイルスの培養にはさまざまなものが使われますが、有精卵が最も適していると考えられており、全世界で使われています。

5.うずらのたまごは孵るって本当?

さて、ここまで説明したのは「鶏のたまご」のお話です。うずらのたまごもスーパーで売っていますが、こちらは鶏のたまごとは話が違います。温めると、うずらの場合はヒナが孵ることがあるのです。

「有精卵しかヒナにならない」というのは、鶏のたまごと同じです。しかし、うずらの場合、1羽ごとのケージ飼いではなく複数のうずらを一箇所でまとめて飼育します。このときメスのみにするのですが、オスが紛れ込んでしまうことがあるそうです。理由は簡単、「オスかメスか、プロでも見分けるのが難しいから」。ということで有精卵が無精卵に混ざって出荷され、知らず知らずのうちにスーパーに並ぶというわけです。なお、テレビでやっていたときは暇な売れないお笑い芸人さんが孵化をやっていました。なかなか手間のかかる作業のようです。

重要
うずらは、無精卵に混ざって有精卵が出荷されているため、ヒナが孵る可能性がある

6.まとめ

以上、スーパーのたまごを温めたらひよこが孵るのか?について、解説しました。子どもがたまごを抱え込むと大変なことになるので、そっと諭してあげましょう。

まとめ
  • スーパーに並ぶのは受精していない無精卵なので、温めてもひよこは孵らない。
  • 有精卵と無精卵で、栄養や味に差はない。
  • 鶏は「排卵=産卵」であり、排卵周期が約24時間のためたまごを1日1個産む。
  • 排卵周期が約24時間なのは、人間による品種改良の結果。
  • うずらのたまごは有精卵が混ざっていることがあり、温めるとヒナが産まれることもある。

参考

参考
たまご博物館
たまごについて、生物学や経済学などの多方面から詳しく解説されています。
参考
一般財団法人 日本養鶏協会HP
たまごへの愛を感じます。わかりやすい解説。
サルワカ