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狼などに食べられてしまう羊。彼らは緑色の草原の中にいるのに、なぜ目立つ白色をしているのでしょうか。緑色ならカモフラージュできるのに・・・。
今回は生き物の雑学として、羊などの被食される草食哺乳類が緑色ではない理由を解説します。
捕食者と被食者
最初に用語を簡単に説明します。
自然界において、羊などの草食動物は狼などの肉食動物に食べられます。また、バッタなどの昆虫はクモや鳥などに食べられます。
このような「食べる・食べられるという関係」において、食べる側を捕食者、食べられる側を被食者と言います。「捕らえて食べる者」、「食を被る者」というわけです。
羊が緑色ではない理由
緑色の中に白色の羊・・・遠くから見てもわかるほど、目立ちますね。これでは敵にあっさりと見つかってしまいそうです。しかし、バッタなどの昆虫は、草の色に隠れるように緑色をしています。なかなか見つけられませんね。
草食動物である羊は緑色の草原の中にいることが多いはずです。昆虫と違って、なぜこのような目立つ色をしているのでしょうか。理由は3つあります。
理由1:捕食者の色覚能力が低い
昆虫を捕食する鳥やクモは、色を感じること(=色覚)ができます。しかし、狼などの肉食動物は色をほとんど判断できません。
つまり、狼たち肉食動物の色覚能力が低いため、羊はどのような色をしていようと、見つかりやすさに差がないのです。
狼など肉食哺乳類に対して、鳥やクモは色覚能力が高いです。そのため、もし被食者である昆虫が真っ白な姿で草むらにいたら、捕食者に一瞬で見つかって食べられてしまいます。
よって、何色をしていようが生存確率に影響がない羊は目立つ色を、色によって捕食されやすさが変わる昆虫は見つかりにくい緑色をしているのです。
理由2:羊は色に無頓着
被食者である羊自身も色覚能力が低いです。そもそも周囲がどのような色なのか、自分がどのような色なのかを把握していません。
よって、色彩に無頓着であり、これも羊が緑色でない理由となっていると考えられます。
理由3:遺伝子的に緑色を作れない
昆虫と異なり、草食の哺乳類は「緑色の色素を作る」という遺伝子を持っていません。つまり、そもそも緑色の毛や皮膚を作ることができないのです。
よって長い進化の歴史の中で、羊の遺伝子は「緑色の体毛を作ってみて、生き残りやすいかどうかを確かめる」という実験ができませんでした。だから緑色の羊は皆無なのです。
仮に遺伝子の突然変異かなにかでうっかり緑色の羊が生まれたとしても、「理由1:捕食者は色覚能力が低い」のため、その緑色の羊が生き残りやすいわけではありません。数も少ないので即滅んだ・・・ということも、もしかすると長い歴史のなかで起こっていたかもしれませんね。
対して、昆虫は緑色を作る遺伝子を持っているため、「体を緑色にしてみて、生き残りやすいかどうかを確かめる」という実験を進化の中で行うことができました。
そして結果として、「緑色が生き残りやすい」ことが分かりました。そのため、捕食されやすい色の昆虫はいなくなり、捕食されにくい現在の緑色の体になったというわけです。
まとめ
被食者である羊が緑色をしていないのは、
- 捕食者である狼たちの色覚能力が低い
- 羊自身も色覚能力が低いので、色に無頓着
- 緑色の体毛を作れる遺伝子を持っていない
という理由が考えられます。
対して、同じく草原にいる昆虫は、
- 捕食者である鳥やクモは色覚能力が高い
- 緑色の色素を作る遺伝子を持っている
- 進化の歴史の中での実験で「緑色が生き残りやすい」という結果を得た
という理由により、羊と違って緑色をしていると考えられます。